記事一覧に戻る
比較・選び方

賃貸契約の電子化で失敗しない選び方って?

作成: AI監修: 金井泰樹 2026年2月20日
賃貸契約の電子化で失敗しない選び方って?

飲食・サービス業の賃貸契約、紙のままで大丈夫?

店舗を構える飲食・サービス業にとって、テナント契約は事業の土台です。開業時の新規契約だけでなく、更新や条件変更のたびに書面でのやり取りが発生します。その都度、紙の契約書を印刷し、収入印紙を貼り、郵送して返送を待つ。この一連の作業に、どれだけの時間とコストをかけていますか。

2022年5月の宅地建物取引業法改正により、不動産取引における電子契約が全面解禁されました。テナントの賃貸借契約書や重要事項説明書も、電子的に交付できるようになっています。しかし、いざ電子契約を導入しようとすると「どのサービスを選べばいいのかわからない」という声をよく聞きます。

飲食・サービス業では、テナント契約だけでなく、従業員の雇用契約や食材の仕入先との取引基本契約など、多種多様な契約が日常的に発生します。業種別の電子契約活用については業種別 電子契約活用ガイドでも詳しくまとめていますが、本記事では「賃貸契約の電子化」を軸に、電子契約サービスの選び方を比較・検討していきます。

賃貸契約の電子化で得られる3つのメリット

電子契約サービスの選定に入る前に、賃貸契約を電子化することで具体的に何が変わるのかを整理しておきましょう。

印紙税の削減

紙の賃貸借契約書には、契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。印紙税法上、電子契約は「課税文書」に該当しないため、印紙税がかかりません。たとえば、月額賃料30万円の店舗を5年契約する場合、契約金額は1,800万円です。紙で契約すると印紙税は2万円。複数店舗を運営し、契約更新のたびに印紙を貼っていれば、年間でまとまった金額になります。

郵送・保管コストの削減

紙の契約書は、貸主・管理会社との間で郵送が必要です。レターパックや書留で送ると1通あたり数百円。さらに、契約書の原本を保管するためのファイルやキャビネットも必要です。電子契約に切り替えれば、送付はオンラインで即座に完了し、保管はクラウド上で行えます。物理的な保管スペースが不要になるのは、店舗のバックヤードが狭い飲食店にとって意外と大きなメリットです。

契約業務のスピードアップ

紙の契約書を郵送でやり取りすると、往復で1〜2週間かかることも珍しくありません。電子契約であれば、送信から署名完了まで最短で当日中に済みます。新店舗のオープン準備で時間に追われている状況では、このスピード感が助かります。テナント契約だけでなく、内装工事の請負契約や設備リース契約も同時に進められるため、開業準備全体の効率が上がります。

電子契約サービスを選ぶ5つの判断基準

電子契約サービスは多数ありますが、飲食・サービス業の中小企業が選ぶ際に重視すべきポイントは以下の5つです。

1. 相手方のアカウント登録が不要か

テナント契約の相手方は、物件オーナーや管理会社です。雇用契約であれば従業員、仕入契約であれば食材業者。これらの相手方に電子契約サービスへの登録を求めるのは現実的ではありません。メールアドレスだけで署名依頼を送れる「立会人型」のサービスであれば、相手方にアカウント作成の手間をかけずに済みます。

2. 月額コストと送信料のバランス

電子契約サービスの料金体系は、大きく分けて「月額固定」「送信従量課金」「月額+従量」の3パターンがあります。飲食・サービス業の場合、月に何十通も契約を締結するわけではないケースが多いでしょう。月に数通程度であれば、月額料金が低いサービスや、送信通数に応じた従量課金のサービスが適しています。一方、多店舗展開で契約数が多い場合は、送信し放題のプランがお得になります。

3. 契約書テンプレート機能の有無

雇用契約書は従業員ごとに氏名や条件が変わりますが、ひな形自体は共通です。テンプレート機能があれば、一度登録しておくだけで、必要な箇所だけを入力して契約書を作成できます。テナント契約書も、物件情報や賃料部分だけを変えて使い回せるため、複数店舗を展開する企業では特に便利です。

4. 契約書の一元管理と検索性

店舗数が増えると、どの物件の契約がいつ更新なのか把握しづらくなります。電子契約サービスの中には、契約書をフォルダやタグで整理し、更新期限が近づくとアラートを出してくれる機能を備えたものがあります。テナント契約、雇用契約、仕入契約と契約種別ごとに分類して管理できると、日々のオペレーションがスムーズになります。

5. 法的要件への対応

電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)では、本人による電子署名がなされた電子文書は、真正に成立したものと推定されます。電子契約サービスを選ぶ際には、電子署名法に基づく署名方式を採用しているか、タイムスタンプが付与されるか、改ざん検知の仕組みがあるかを確認してください。特にテナント契約は金額が大きく、契約期間も長いため、法的な証拠力が重要です。

飲食・サービス業で電子化すべき契約の優先順位

すべての契約を一度に電子化する必要はありません。効果が高く、導入のハードルが低い契約から段階的に進めるのが現実的です。

優先度1:雇用契約・労働条件通知書

飲食・サービス業では、パート・アルバイトの入退社が頻繁に発生します。採用のたびに紙の雇用契約書を用意し、対面で署名をもらうのは手間がかかります。2019年4月の労働基準法施行規則改正により、労働者の希望があれば労働条件通知書の電子交付が可能になりました。電子契約サービスを使えば、応募者が採用決定後にスマートフォンから署名できるため、出勤初日を待たずに契約を完了できます。

特に繁忙期の前に大量採用を行う場合、紙の契約書を人数分印刷し、一人ひとり対面で署名してもらう作業は相当な負担です。電子契約であれば、テンプレートから一括で契約書を作成し、各応募者にメールで送信するだけで済みます。

優先度2:テナント賃貸借契約

テナント契約は件数こそ少ないものの、1件あたりの金額が大きく、印紙税削減の効果も大きい契約です。契約期間は2〜5年が一般的で、更新のたびに書面でのやり取りが発生します。電子契約に切り替えれば、更新手続きもオンラインで完結できます。

ただし、テナント契約の電子化には注意点があります。物件オーナーや管理会社が電子契約に慣れていない場合、丁寧な説明が必要です。宅地建物取引業法で定められた重要事項説明についても、IT重説(ビデオ通話による説明)と電子交付の要件を満たす必要があります。定期借家契約の場合は、「更新がなく期間満了で終了する」旨の事前説明を別書面で行う義務がある点にも注意してください。

優先度3:仕入先との取引基本契約

食材業者や備品業者との取引基本契約は、一度締結すれば数年間有効なケースが多いです。日々の発注・納品は別途の注文書で行うため、取引基本契約自体の締結頻度は低めです。ただし、取引先が複数ある場合は管理が煩雑になりやすく、電子化による一元管理の恩恵を受けられます。

仕入契約の電子化でポイントとなるのは、品質基準や納品条件の記載です。食品を扱う飲食業では、品質管理に関する取り決めが重要です。電子契約であれば、契約内容を検索・参照しやすいため、トラブル発生時に迅速に契約条件を確認できます。

優先度4:業務委託契約・設備リース契約

清掃業者やメンテナンス業者への業務委託契約、厨房機器やPOSシステムのリース契約も電子化の対象です。これらの契約は金額や期間がまちまちですが、電子化しておくことで契約期間の管理が容易になります。リース契約の満了時期を見逃して自動更新されてしまうといったトラブルも防げます。

電子契約サービスの料金タイプを比較

中小企業が電子契約サービスを選ぶ際、最も気になるのは料金です。ここでは、一般的な料金タイプごとの特徴を整理します。自社の契約件数と照らし合わせて、最適なタイプを検討してください。

従量課金型

月額基本料は無料または低額で、契約書を送信するたびに1通あたりの料金が発生するタイプです。月に数通しか契約を締結しない事業者に向いています。初期費用を抑えたい開業直後の飲食店にも適しています。ただし、契約件数が増えると割高になるため、多店舗展開が進んだ段階では見直しが必要です。

月額固定型

月額料金を支払えば、送信通数に上限がないタイプです。毎月一定数以上の契約を締結する企業に向いています。多店舗展開で雇用契約が頻繁に発生する場合や、複数のテナント契約を管理する場合はこちらが有利です。

フリーミアム型

基本機能は無料で使え、高度な機能やサポートを利用する場合に有料プランへ移行するタイプです。まず電子契約を試してみたいという段階であれば、フリーミアム型から始めるのが手軽です。ただし、無料プランでは送信通数やテンプレート数に制限があることが多いため、本格運用する際には有料プランへのアップグレードが必要になります。

Simple Contractは、中小企業向けの立会人型電子契約サービスとして、相手方のアカウント登録が不要な点が特徴です。契約書の送信から署名、完了PDFの生成まで一連の流れをオンラインで完結でき、署名時の証跡(日時、IPアドレス、User-Agent)を記録するため法的な証拠力も確保できます。テンプレート機能や契約書の管理機能も備えており、飲食・サービス業の多様な契約に対応しています。

導入前に確認すべき3つの注意点

電子契約サービスの導入は多くのメリットがありますが、事前に確認しておくべき点もあります。

1. 相手方の理解と同意

電子契約は、送信者だけでなく相手方の協力が必要です。物件オーナーや管理会社の中には、電子契約に慣れていない方もいます。「紙でなくて大丈夫なのか」「法的に有効なのか」といった疑問に答えられるよう、電子署名法の概要や電子契約の法的効力について簡単に説明できる資料を用意しておくとスムーズです。

また、宅建業者が仲介する賃貸借契約で重要事項説明書や契約書を電子交付する場合は、借主の承諾が必要です。相手方の同意なく一方的に電子契約で進めることはできない点を覚えておいてください。

2. 既存契約の取り扱い

すでに紙で締結済みの契約書を、電子契約サービスで管理したい場合はどうすればよいでしょうか。多くの電子契約サービスでは、既存の紙の契約書をスキャンしてPDFとしてアップロードし、電子データとして管理する機能を提供しています。ただし、スキャンした契約書は「電子契約」ではなく、あくまで「紙の契約書の電子コピー」です。原本としての効力は紙の契約書にあるため、原本の保管は引き続き必要です。

新規契約や更新契約から電子契約に切り替え、既存の契約書は紙のまま保管するという運用が現実的です。契約の更新時期に合わせて順次電子化していけば、数年後にはほとんどの契約が電子データとして一元管理できるようになります。

3. 社内の運用ルール策定

電子契約サービスを導入しても、社内のルールが整備されていなければ運用がうまくいきません。誰が契約書を作成するのか、承認フローはどうするのか、完了した契約書はどこに保存するのか。これらの基本的なルールを事前に決めておきましょう。

飲食・サービス業では、店長やエリアマネージャーが現場で契約手続きを行うことが多いため、操作がシンプルなサービスを選ぶことも大切です。ITに詳しくないスタッフでも迷わず使える操作性は、定着率に直結します。

店舗運営の効率化につなげる活用のコツ

電子契約サービスは、単に紙の契約書を電子化するだけのツールではありません。店舗運営全体の効率化につなげる使い方を紹介します。

契約更新のリマインドで更新漏れを防ぐ

テナント契約や設備リース契約には更新期限があります。紙の契約書をファイルに綴じて棚に保管していると、いつの間にか更新時期を過ぎていたということが起こりえます。電子契約サービスで管理していれば、更新期限が近づいた契約を一覧で確認できます。リマインド機能があるサービスなら、更新手続きの準備時期をメールで通知してくれます。

雇用契約のテンプレートで採用業務を効率化

飲食・サービス業では、パート・アルバイトの採用が年間を通じて発生します。雇用契約書のテンプレートを電子契約サービスに登録しておけば、氏名・時給・勤務時間などの変動項目だけを入力するだけで契約書が完成します。採用決定から契約締結までの時間を大幅に短縮でき、人事担当者の負担を軽減できます。

複数店舗の契約を本部で一元管理

複数店舗を運営する企業では、各店舗のテナント契約、従業員の雇用契約、仕入先との取引契約が分散しがちです。電子契約サービスを導入すれば、本部からすべての契約を一括管理できます。「A店のテナント契約はいつ更新?」「B店の仕入先との契約条件は?」といった確認が、画面上で即座に行えるようになります。

店舗ごとのフォルダ分けや、契約種別でのタグ付け機能を活用すれば、管理の手間はさらに減ります。監査対応時にも、必要な契約書を検索・出力するだけで済むため、準備作業が大幅に効率化されます。

賃貸契約の電子化は段階的に進めよう

電子契約サービスの導入は、一度にすべてを変える必要はありません。まずは雇用契約など件数が多く、相手方(従業員)の理解が得やすい契約から始めるのがおすすめです。電子契約の運用に慣れたら、テナント契約や仕入契約へと対象を広げていきましょう。

サービスの選定では、自社の契約件数と料金タイプの相性、相手方の使いやすさ、法的要件への対応の3点を軸に比較してください。大規模で高機能なサービスが必ずしも最適とは限りません。中小企業であれば、シンプルな操作性と手頃な料金を両立したサービスが、長く使い続けられます。

賃貸契約の電子化は、コスト削減と業務効率化を同時に叶える手段です。飲食・サービス業特有の多様な契約に対応できるサービスを選び、店舗運営の基盤を整えていきましょう。業種ごとの契約電子化のポイントについては業種別 電子契約活用ガイドもあわせてご参照ください。

メルマガで最新情報をお届け

電子契約の基礎知識・活用ノウハウ・法改正情報などを配信

登録は無料です。いつでも配信解除できます。

作成

AI

監修

金井泰樹

電子契約についてもっと詳しく知りたい方へ

電子契約の仕組み、法的根拠、導入メリットまで体系的に理解できる完全ガイド

GET STARTED

契約は、シンプルでいい。

契約書の作成から署名依頼、保管まで。アカウント登録から最短30秒で契約書を送信できます。