Web制作の契約書、紙のままで大丈夫?
Web制作を外部に依頼するとき、契約書はどうしていますか。口約束やメールのやり取りだけで進めているケースも少なくありません。
しかし契約書がないと、納品物の範囲や修正回数、支払い条件でトラブルになりがちです。実際、Web制作の紛争では「言った・言わない」の食い違いが争点になることが多いとされています。
一方で、紙の契約書にも課題があります。郵送でのやり取りには時間がかかり、契約金額によっては印紙税も発生します。特に中小企業では、制作会社との契約を年に何件も交わすこともあるでしょう。そのたびに印刷・押印・郵送を繰り返すのは手間です。
こうした背景から、Web制作の契約書を電子契約に切り替える企業が増えています。電子契約であれば、オンラインで完結できるうえ、印紙税が不要になります。
本記事では、Web制作における契約書の基本と、電子契約への切り替え方法をわかりやすく解説します。契約まわりに不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
Web制作で取り交わす契約書の種類と役割
Web制作に関わる契約書は、大きく分けて3つあります。それぞれの役割を理解しておくと、トラブル防止に役立ちます。
1. 業務委託契約書
Web制作全般を外注する際に締結する契約書です。「請負契約」と「準委任契約」の2種類があります。請負契約は成果物の完成を約束するもので、Webサイトの制作に多く使われます。準委任契約は作業の遂行を約束するもので、コンサルティングや運用保守に適しています。
請負契約の場合、契約金額が1万円以上になると印紙税法により収入印紙が必要です。たとえば契約金額が100万円を超え200万円以下であれば、印紙税は400円かかります。年間の契約件数が多い企業ほど、この負担は無視できません。
2. 秘密保持契約書(NDA)
制作会社にログイン情報や顧客データを共有する場面は多いものです。NDAを締結しておけば、情報漏洩のリスクを法的に抑えられます。Web制作の初期段階、見積もり依頼の前に取り交わすのが一般的です。
3. 保守・運用契約書
サイト公開後の更新作業やサーバー管理を依頼する場合に必要です。対応範囲や月額費用、解約条件を明確にしておくことで、長期的な関係を安定させられます。
これらの契約書は、すべて電子契約で締結できます。紙でなければ有効でないという法律上の制約は、ごく一部の例外を除いてありません。
Web制作の契約書で押さえるべき5つのポイント
Web制作では、一般的な業務委託とは異なるチェック項目があります。以下の5点は特に重要です。
- 成果物の定義:「Webサイト一式」では曖昧です。ページ数、デザインカンプの枚数、対応ブラウザ、レスポンシブ対応の有無など、具体的に定めましょう。仕様書を別紙として添付する方法も有効です。
- 修正回数の上限:デザイン修正が無制限だと、制作側の負担が際限なく増えます。「デザイン確定後の修正は2回まで」のように明記すると、双方が安心して進められます。
- 著作権の帰属:制作物の著作権は原則として制作者に帰属します。発注者に帰属させたい場合は、契約書に明記が必要です。「納品と同時に著作権(著作権法第27条・第28条の権利を含む)を発注者に譲渡する」という条項が一般的です。
- 検収条件と期間:納品後に動作確認を行う期間(検収期間)を定めます。一般的には納品後14日〜30日です。検収期間中に不具合が見つかった場合の修正義務も明記しましょう。
- 支払い条件:着手金と完了時の分割払いが多いです。「契約締結時に50%、検収完了後に50%」のような条件を明確にします。支払い期日は「請求書受領後30日以内」などと具体的に書くのが安全です。
これらの条件をメールだけでやり取りしていると、後から「そんな約束はしていない」と言われるリスクがあります。契約書として書面化し、双方の合意を証拠として残すことが重要です。
Web制作の契約書を電子契約にするメリット
Web制作の契約を電子契約に切り替えると、次のようなメリットがあります。
印紙税が不要になる
国税庁の見解では、電子契約は印紙税法上の「文書」に該当しないため、印紙税がかかりません。紙の請負契約書では契約金額に応じて200円〜数万円の印紙税が発生しますが、電子契約なら0円です。Web制作を複数案件抱える企業であれば、年間で数千円から数万円の削減が見込めます。
契約締結のスピードが上がる
紙の契約書は、印刷・押印・郵送・返送のプロセスがあり、締結まで1〜2週間かかることも珍しくありません。電子契約であれば、送信してから相手が署名するまで、最短で当日中に完了します。Web制作はスケジュールがタイトなことが多いため、この時間短縮は大きなメリットです。
リモートでも契約できる
Web制作会社は遠方にあることも多いでしょう。クラウドソーシングを活用して個人のフリーランスに依頼するケースも増えています。電子契約なら、相手がどこにいてもインターネット環境さえあれば契約を締結できます。
管理・検索が簡単になる
締結した契約書はクラウド上に保存されるため、キャビネットやファイルで紙を保管する必要がありません。契約書を探すときもキーワード検索ですぐに見つかります。「あの制作会社との契約条件はどうだったか」を確認したい場面で重宝します。
改ざん防止の仕組みがある
電子契約では、署名時のタイムスタンプやPDFのハッシュ値(データの指紋のようなもの)が記録されます。これにより、契約書が後から書き換えられていないことを証明できます。紙の契約書よりも、むしろ証拠力が高いとも言えます。
電子契約の法的な有効性は本当にあるの?
「電子契約は法的に認められるの?」という疑問を持つ方は多いです。結論から言えば、法律上の根拠は整っています。
まず、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)の第3条では、本人による電子署名が付された電磁的記録は、真正に成立したものと推定されると定められています。つまり、適切な電子署名があれば、紙に実印を押した契約書と同等の法的効力が認められます。
また、Web制作の業務委託契約は、法律で書面作成が義務づけられていません。民法上、契約は当事者の合意だけで成立します(これを「諾成契約」と呼びます)。したがって、電子的な方法で合意しても法的に有効です。
さらに、2021年のデジタル改革関連法の施行以降、行政手続きを含め電子化の流れは加速しています。デジタル庁が推進する社会全体のデジタル化の方針からも、電子契約は今後ますます標準的な方法になると考えられます。
ただし注意点もあります。電子契約サービスには「立会人型」と「当事者型」の2種類があります。
- 当事者型:契約者本人が電子証明書を取得して署名する方式です。法的な証拠力が高い反面、電子証明書の取得に手間とコストがかかります。
- 立会人型:サービス提供者が仲介して、メール認証等で本人確認を行う方式です。手軽に利用できるため、中小企業やフリーランスとの取引に適しています。
Web制作の契約であれば、立会人型の電子契約サービスで十分な場合がほとんどです。取引金額や契約の重要度に応じて選択するとよいでしょう。
Web制作の契約書を電子化する具体的な手順
ここからは、実際にWeb制作の契約書を電子化する手順を説明します。難しい操作は必要ありません。
ステップ1:契約書のひな形を準備する
まず、Web制作用の契約書テンプレートをPDF形式で用意します。前述した5つのポイント(成果物の定義、修正回数、著作権、検収条件、支払い条件)が含まれていることを確認しましょう。既存の紙の契約書があれば、それをPDFに変換するだけでも構いません。
ステップ2:電子契約サービスを選ぶ
中小企業がWeb制作の契約に使うなら、以下の条件を満たすサービスが使いやすいです。
- 相手方のアカウント登録が不要(メールだけで署名できる)
- 月額費用が抑えられる(契約件数が少なくてもコスト負けしない)
- 操作が簡単でITに詳しくなくても使える
- 証跡(署名日時、IPアドレス等)がしっかり記録される
たとえばSimple Contractは立会人型の電子契約サービスで、相手方はメールに届いたURLから署名するだけで契約が完了します。アカウント登録の手間がないため、フリーランスの制作者にも受け入れてもらいやすいでしょう。
ステップ3:契約書をアップロードして送信する
PDFをサービスにアップロードし、相手方のメールアドレスを入力して送信します。署名欄の位置を指定できるサービスもあります。
ステップ4:相手方が署名する
相手方にはメールで通知が届きます。メール内のURLをクリックし、契約内容を確認のうえ同意操作を行います。相手方がアカウントを作る必要はなく、ブラウザ上で完結するのが立会人型の特徴です。
ステップ5:締結完了・保管
双方の署名が完了すると、署名履歴(日時、IPアドレス、User-Agent)が記録されたPDFが生成されます。このPDFが契約の証拠書類となります。クラウド上に自動保管されるため、紛失の心配もありません。
以上の5ステップで、Web制作の契約を電子化できます。初めて使う場合でも、1件あたり10〜15分程度で完了するでしょう。紙の契約書に比べて圧倒的に短い時間で締結が可能です。
なお、電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)の要件を満たすためには、タイムスタンプの付与や検索機能の確保が必要です。電子契約サービスを選ぶ際には、この点も確認しておくとよいでしょう。

