介護施設や医療法人では、日々多くの契約書類が発生します。利用者との契約書、スタッフの雇用契約書、業者との取引契約書など、紙の書類管理に追われている現場も少なくありません。
「契約書の保管場所がいっぱい」「署名をもらうために何度も訪問している」「書類を探すのに時間がかかる」こうした悩みを抱えていませんか。
電子契約を導入すれば、これらの課題を解決できる可能性があります。この記事では、介護業界における電子契約の基礎知識から、具体的な導入方法までをわかりやすく解説します。
介護業界で電子契約が注目される背景
介護業界では、人手不足が深刻な課題となっています。厚生労働省の推計によると、2025年度には約32万人の介護人材が不足するとされています。限られた人員で質の高いサービスを提供するためには、事務作業の効率化が欠かせません。
契約関連の業務は、意外と多くの時間を消費しています。利用契約書の作成、説明、署名、保管といった一連の流れを紙で行うと、1件あたり数十分から1時間程度かかることもあります。これが積み重なると、現場スタッフの大きな負担となります。
また、2020年以降の感染症対策として、対面での接触を減らす必要性も高まりました。電子契約であれば、相手と直接会わなくても契約を締結できます。この点も、介護・医療現場での導入を後押ししています。
さらに、政府のデジタル化推進も追い風です。デジタル庁を中心に、行政手続きのオンライン化が進められています。介護保険の申請や届出も電子化が進んでおり、事業所全体でデジタル対応を進める機運が高まっています。
電子契約の法的効力は本当に大丈夫?
「電子契約って法的に有効なの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。結論から言えば、電子契約は法的に有効です。
日本では、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)により、電子署名が付された電子文書は、手書きの署名や押印と同等の法的効力を持つと定められています。具体的には、電子署名法第3条において、本人による電子署名がされた電子文書は真正に成立したものと推定すると規定されています。
介護サービスの利用契約についても、法律上、書面での締結が義務付けられているわけではありません。介護保険法では、重要事項説明書の交付や契約内容の説明は求められていますが、電子的な方法での対応も認められています。
ただし、注意点もあります。利用者やご家族の中には、デジタル機器の操作に不慣れな方もいらっしゃいます。そのような場合は、従来通り紙での契約も選択肢として残しておくことが大切です。電子契約はあくまで選択肢の一つとして、相手の状況に応じて柔軟に対応しましょう。
介護施設で電子契約を使う具体的な場面
介護施設では、さまざまな場面で電子契約を活用できます。代表的な例を見ていきましょう。
利用契約書・重要事項説明書
新規利用者との契約時に最も活用されるのが、利用契約書と重要事項説明書です。従来は、ご家族に来所いただくか、スタッフが訪問して署名をもらう必要がありました。電子契約なら、メールで送信して、相手の都合の良いタイミングで署名してもらえます。遠方に住むご家族との契約もスムーズに進められます。
雇用契約書・労働条件通知書
介護スタッフとの雇用契約にも電子契約は有効です。採用が決まった方に、入職前にオンラインで契約を済ませておくことができます。契約更新の際も、対面で時間を取らずに手続きできるため、お互いの負担が軽減されます。
業者との取引契約書
食材の仕入れ先、清掃業者、医療機器のリース会社など、外部業者との契約も発生します。これらの取引契約書を電子化することで、契約締結のスピードが上がり、事業運営がスムーズになります。
秘密保持契約書(NDA)
実習生の受け入れや、外部コンサルタントとの協業時には、秘密保持契約を結ぶことがあります。電子契約であれば、実習開始前に確実に契約を完了させておくことができます。
電子契約導入で得られる5つのメリット
介護施設が電子契約を導入すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。主な5つのポイントを紹介します。
1. 契約締結のスピードアップ
紙の契約書では、郵送や訪問で数日から1週間程度かかることがあります。電子契約なら、送信から署名まで最短で当日中に完了することも可能です。緊急の入所対応など、スピードが求められる場面で特に効果を発揮します。
2. 印紙代・郵送費の削減
電子契約には印紙税がかかりません。印紙税法では、紙の契約書に対して印紙税が課されますが、電子データは課税対象外です。また、郵送費や封筒代などの消耗品費も削減できます。年間の契約件数が多い施設ほど、コスト削減効果は大きくなります。
3. 保管スペースの削減
介護施設では、利用者の記録や契約書類を長期間保管する必要があります。電子契約であれば、書類はすべてクラウド上に保存されるため、物理的な保管スペースが不要になります。ファイリングや整理の手間も省けます。
4. 書類検索の効率化
「あの利用者さんの契約書はどこだっけ?」紙の書類だと、探すのに時間がかかることがあります。電子契約システムなら、利用者名や契約日で検索して、すぐに必要な書類を見つけられます。監査対応時にも役立ちます。
5. セキュリティの向上
紙の書類は、紛失や盗難、火災などのリスクがあります。電子契約システムでは、データが暗号化されてクラウド上に保管されます。アクセス権限の設定もできるため、必要な人だけが書類を閲覧できる環境を作れます。
電子契約サービスを選ぶときのチェックポイント
電子契約サービスは多数あり、どれを選べばよいか迷うこともあるでしょう。介護施設が選ぶ際に確認したいポイントを整理します。
操作のシンプルさ
介護現場のスタッフ全員がITに詳しいわけではありません。直感的に操作できる、わかりやすいインターフェースのサービスを選びましょう。無料トライアルがあれば、実際に触って確認することをおすすめします。
相手方の負担
利用者やご家族が署名する際に、アプリのインストールやアカウント登録が必要だと、ハードルが高くなります。メールのリンクをクリックするだけで署名できるような、シンプルな仕組みのサービスが望ましいでしょう。
料金体系
月額固定制、従量課金制など、サービスによって料金体系はさまざまです。自施設の契約件数を想定して、無理のないコストで運用できるサービスを選びましょう。中小規模の施設であれば、月額数千円から始められるサービスもあります。
セキュリティ対策
介護施設が扱う契約書には、利用者の個人情報が含まれます。データの暗号化、アクセスログの記録、二段階認証など、セキュリティ対策がしっかりしているサービスを選ぶことが重要です。
サポート体制
導入時や運用中に困ったとき、すぐに相談できるサポート体制があると安心です。電話やメールでの問い合わせ対応、マニュアルの充実度なども確認しておきましょう。
たとえば、Simple Contractは中小規模の事業者向けに設計されており、相手方はアカウント登録不要で署名できます。シンプルな操作性と手頃な価格設定で、介護施設での導入にも適しています。
電子契約を導入する際の注意点
電子契約の導入にあたっては、いくつか注意しておきたい点があります。スムーズに運用を始めるために、事前に確認しておきましょう。
利用者・ご家族への丁寧な説明
高齢の利用者やご家族の中には、電子契約に不安を感じる方もいらっしゃいます。「紙の契約書と同じ法的効力があること」「操作は簡単であること」「紙での契約も選べること」などを丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。
段階的な導入
いきなり全ての契約を電子化するのではなく、まずは雇用契約や業者との契約など、内部的なものから始めるのがおすすめです。運用に慣れてから、利用者との契約にも広げていくとスムーズです。
紙の契約書との併用期間
導入直後は、紙と電子の両方で契約を締結するケースが出てきます。どちらの契約書がどこに保管されているか、混乱しないように管理ルールを決めておきましょう。
スタッフへの研修
現場スタッフが迷わず使えるよう、導入前に簡単な研修を行いましょう。操作マニュアルを作成しておくと、後から入職したスタッフにも引き継ぎやすくなります。
既存書類のデジタル化
過去の紙の契約書をどう扱うかも検討が必要です。すべてスキャンして電子化する方法もありますが、手間とコストがかかります。新規契約から電子化を始め、過去の書類は従来通り保管するという判断も現実的です。
介護業界のペーパーレス化を成功させるために
電子契約の導入は、介護業界のペーパーレス化を進める第一歩です。最後に、成功させるためのポイントをまとめます。
まず、目的を明確にしましょう。「スタッフの業務負担を減らしたい」「契約締結のスピードを上げたい」「書類の保管スペースを削減したい」など、自施設の課題に合わせて導入を進めることが大切です。
次に、小さく始めて徐々に広げることを意識しましょう。最初から完璧を目指すのではなく、まずは一部の契約から始めて、うまくいったら範囲を広げていく方法がおすすめです。
そして、現場の声を大切にしましょう。実際に契約業務を行うスタッフの意見を聞きながら、使いやすい運用方法を一緒に考えていくことが、定着への近道です。
介護業界における電子契約の導入は、単なる業務効率化にとどまりません。スタッフが事務作業に費やす時間を減らし、利用者と向き合う時間を増やすことにつながります。人手不足が続く中、限られたリソースを有効活用するための手段として、電子契約の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

