SES契約で発生する書類、全部把握できていますか?
SES(System Engineering Service)契約は、ITエンジニアの技術力を提供する契約形態です。客先にエンジニアを常駐させる形が多く、中小のSES企業では毎月のように契約関連の書類が発生します。
具体的にどのような書類があるのか整理してみましょう。
- 基本契約書:取引先との間で最初に締結する包括的な契約。秘密保持や損害賠償などの基本条件を定めます。
- 個別契約書(注文書・注文請書):案件ごとに作業内容・期間・単価を定める書類。毎月や案件変更のたびに発行されます。
- 業務委託契約書:準委任契約としてSES業務を委託する際の契約書。作業範囲や指揮命令系統を明確にします。
- 秘密保持契約書(NDA):取引開始前に締結するケースが多く、情報漏洩を防ぐための取り決めです。
- 契約更新・変更の覚書:単価変更や期間延長の際に作成する補足書類です。
エンジニアを10名稼働させている会社であれば、毎月10通以上の注文書・注文請書が発生します。年間では120通を超える計算です。これに基本契約やNDAを加えると、書類の管理だけで相当な手間がかかっているのではないでしょうか。
紙の契約書がSES企業の負担になる理由
SES契約の書類管理が特に大変な理由は、その「頻度」と「関係者の多さ」にあります。
まず、紙の契約書にかかるコストを考えてみましょう。印刷代・郵送代・封筒代といった直接的な費用だけでなく、印紙税も無視できません。
印紙税法では、請負に関する契約書(2号文書)や継続的取引の基本契約書(7号文書)に収入印紙の貼付が必要です。SES契約は準委任契約であれば原則として印紙税は不課税ですが、契約内容によっては請負契約と判断されるケースもあります。その場合、契約金額に応じて200円から数万円の印紙税が発生します。
7号文書に該当する基本契約書には、一律4,000円の収入印紙が必要です。取引先が20社あれば、基本契約書だけで80,000円の印紙代がかかる計算になります。
さらに見落としがちなのが「人件費」です。契約書の作成、印刷、製本、押印の手配、郵送、返送の確認、ファイリング。これらの作業を担当者が行う時間を時給換算すると、1通あたり30分から1時間程度かかることも珍しくありません。
SES企業では営業担当が契約事務を兼任しているケースが多いです。本来は新規案件の獲得やエンジニアのフォローに充てるべき時間が、書類作業に消えてしまっている状況です。
電子契約でSES契約書をペーパーレス化するメリット
電子契約を導入すると、SES企業が抱える書類管理の課題を大きく改善できます。主なメリットを具体的に見ていきましょう。
1. 印紙税が不要になる
電子契約で締結した文書には、印紙税がかかりません。国税庁の見解として、電子的に作成・送信された契約書は「文書」に該当しないため、印紙税の課税対象外とされています。先ほどの例で言えば、基本契約書の印紙代だけで年間80,000円の削減が見込めます。
2. 契約締結のスピードが上がる
紙の契約書では、郵送のやり取りに往復で1週間から2週間かかることがあります。電子契約であれば、メールでURLを送信し、相手方がオンラインで同意するだけ。最短で当日中に締結が完了します。
SES契約では月末に翌月分の注文書を急いで回す場面がよくあります。電子契約なら月末の「間に合わない」というストレスから解放されます。
3. 書類の検索・管理が容易になる
紙の契約書はキャビネットに保管し、必要なときに探し出す手間がかかります。電子契約であれば、取引先名やエンジニア名、契約期間などで検索できます。「あのエンジニアの単価はいくらだったか」をすぐに確認できるのは、日常業務で大きな時短になります。
4. テレワーク対応が可能になる
押印のためだけに出社する必要がなくなります。経営者が外出中でも、スマートフォンやタブレットから契約内容を確認し、締結の操作ができます。
5. コンプライアンス強化につながる
電子契約では、誰がいつ契約内容を確認し、同意したかの証跡が自動的に記録されます。紙の契約書では「いつ届いたか」「誰が押印したか」が曖昧になりがちですが、電子契約ならすべての操作履歴が残ります。
SES契約のペーパーレス化で気をつけるポイント
メリットの多いペーパーレス化ですが、SES契約ならではの注意点もあります。導入前に確認しておきましょう。
取引先の理解を得る
SES契約では、エンドクライアント・元請け・二次請けなど複数の会社が関わることがあります。自社だけでなく、取引先も電子契約に対応できるかを事前に確認する必要があります。
ただし、立会人型の電子契約であれば、相手方にアカウント登録を求めない方式のサービスもあります。メールで届いたURLから内容を確認して同意するだけなので、ITに詳しくない担当者でも対応しやすいです。
契約類型の整理
SES契約では、準委任契約と請負契約の区別が重要です。ペーパーレス化にあたって、自社の契約書のひな形を見直し、契約類型を明確にしておくことをおすすめします。契約内容が曖昧なまま電子化すると、後からトラブルになる可能性があります。
保存期間と管理ルールの策定
法人税法では、契約書などの取引関連書類を原則7年間保存する義務があります。電子契約の場合も同様です。電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存する必要があるため、利用するサービスが対応しているか確認しましょう。
具体的には、タイムスタンプの付与、検索機能の確保、見読性の確保といった要件を満たすことが求められます。
既存契約の取り扱い
すでに紙で締結済みの基本契約書は、そのまま有効です。無理にすべてを電子化し直す必要はありません。まずは新規の契約や更新のタイミングから電子契約に切り替えていくのが現実的です。
SES契約書のペーパーレス化を始める手順
実際にペーパーレス化を進めるにあたって、段階的に取り組む方法を紹介します。
ステップ1:現状の棚卸し
まず、自社で発生しているSES関連の書類を洗い出します。基本契約書は何通あるか、毎月の注文書は何通発行しているか、印紙税はいくらかかっているか。現状を数字で把握することが第一歩です。
ステップ2:電子契約サービスの選定
SES企業が電子契約サービスを選ぶ際のポイントは以下のとおりです。
- 相手方のアカウント登録が不要であること:取引先に負担をかけない方式が望ましいです。
- 料金体系が明確であること:月額の固定費と送信ごとの従量課金を比較し、自社の送信量に合ったプランを選びましょう。
- 証跡の記録が充実していること:操作ログ、IPアドレス、タイムスタンプなどが記録されるサービスを選ぶと安心です。
- PDFのアップロードに対応していること:既存のひな形をそのまま使えるかどうかも重要な判断基準です。
たとえばSimple Contractのような立会人型電子契約サービスでは、相手方にアカウント登録を求めずにメールだけで契約締結が完結します。中小企業にとっては、コストを抑えながら法的に有効な電子契約を実現できる選択肢の一つです。
ステップ3:社内ルールの整備
電子契約の利用に関する社内規程を整備します。誰が送信権限を持つのか、承認フローはどうするか、保存先のフォルダ構成はどうするか。最初にルールを決めておくと、運用がスムーズになります。
ステップ4:取引先への案内
主要な取引先に対して、電子契約への切り替えを案内します。「次回の契約更新から電子契約に変更したい」という形で、自然なタイミングで提案するのがコツです。相手方の操作が簡単であることを伝えると、受け入れてもらいやすくなります。
ステップ5:段階的な移行
いきなりすべての書類を電子化するのではなく、まずは注文書・注文請書など頻度の高い書類から始めるのがおすすめです。運用に慣れてきたら、基本契約書やNDAにも範囲を広げていきましょう。
ペーパーレス化で変わるSES企業の業務フロー
最後に、ペーパーレス化によってSES企業の日常業務がどう変わるかをイメージしてみましょう。
月末の契約更新業務
紙の場合、月末になると翌月分の注文書を印刷し、押印して郵送する作業が集中します。10名分の注文書を処理するだけで半日以上かかることもあります。電子契約であれば、PDFをアップロードして送信するだけ。1通あたり数分で完了し、相手方もメール上で確認・同意できます。
契約内容の確認
エンジニアの単価交渉や契約条件の確認が必要になったとき、紙のファイルを探す手間がなくなります。サービス上で検索すれば、過去の契約内容をすぐに参照できます。
監査やコンプライアンスチェック
取引先から契約書の写しを求められた場合も、電子データとしてすぐに共有できます。契約締結の証跡(いつ・誰が・どのIPアドレスから同意したか)が自動記録されているため、監査対応の負担も軽減されます。
SES企業にとって、契約書のペーパーレス化は単なるコスト削減策ではありません。営業担当者が本来の業務に集中できる環境を作り、会社全体の生産性を高める取り組みです。まずは現状の書類量と管理コストを把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。

